一般的に略称でSPS法と呼ばれている。1960年代初頭に日本で発明され、日本・米国の特許が成立した放電焼結法(第一世代方式)を進化させ、1990年に入り住友石炭鉱業㈱が本格実用化(第三世代方式)した。2001年以降現在では第四世代方式に発展した。広義の意味でパルス通電加圧焼結法(PECS:Pulse Electric Current Sintering)とも言う。一軸加圧型焼結法の一種であるが加工原理は大電流ON-OFF直流パルス通電を行うことにより、通電初期には火花放電が発生し、粉体粒子表面の浄化・活性化効果が生ずると考えられている。焼結の中期・後期にはジュール加熱と電磁エネルギーによる熱拡散と電界拡散効果が緻密化の進行を促進する。原料粉体内部からの自己発熱や急速昇温による迅速焼結、反応焼結、微細組織構造制御焼結が可能などを特徴としている。
放電現象は絶縁破壊現象であるが、その過程は「暗流」、「コロナ放電」、「火花放電」、「アーク放電」へと移行する。固体も液体も放電を生じるような電気条件ではその物質は蒸発して気体となる。そしてさらに原子、分子に分解されてプラズマ(電離状態)となる。一般に火花放電は持続時間がおよそ10-7~10-5sec、電位傾度105~106V/cm程度。また電流密度106~109A/cm2にも達するとされ瞬間の単位時間当たりの放出エネルギーは極めて大きく、機械的圧力、高熱(プラズマ相当)、電磁波、光、音などを発生する。火花放電のエネルギー変化率dℇ/dt(ℇ:放電エネルギー、t:時間)および放電の電流変化率dI/dt(I:放電電流)は放電形式の中で最大の値となる。
一般的に略称で「FGM」と呼ばれている。1984~1985年頃日本の仙台地区の材料研究者らでその概念がつくられ『夢の新素材』とも言われており、日本において最もこの分野の研究が進んでいる。FGMは材料の組成、組織、物性などを連続的にあるいは段階的に変化させた材料で、均質な材料には無い新しい機能を生み出す。例えば板状の材料を想定した場合、材料には表裏があり(例えば表は金属、裏はセラミックなど)この表裏の材料の間には明瞭な界面が存在しないように組成が滑らかに変化する構造を持ち、この2種類の両方の特性(セラミックの高温耐熱性と金属の強度)を兼ね備えた新材料を言う。当初はスペースシャトル宇宙往還機の外壁用超耐熱材料として熱応力緩和型FGMの研究開発が国家プロジェクトとして科学技術庁の支援のもと開始された。その後、文部省科研費補助金重点領域研究、経済産業省(NEDO/新エネルギー産業技術総合開発機構)の国プロジェクトとしても取り上げられ、今日ではFGM研究が世界中に広まってきている。
「ナノ」は10億分の1を表す単位。1ナノメートル(nm)は1メートル(m)の10億分の1=1000分の1ミクロンメートル(μm)の超微細な領域である。金属、セラミックスなどの諸物性は結晶粒をナノメータサイズまで微細化すると超塑性、高強度、高靭性、高い電子特性等が得られる。ナノフェーズ材料はナノ材料とも言い、焼結の場ではナノ構造を持つ材料で ①原料粉末粒子径にナノサイズ粒子を用いたナノ構造の焼結体 ②原料粉末粒子径は数十~数百ミクロンでありながら粒子の中でナノ結晶構造を有する原料粉末によるナノ構造の焼結体 ③複合材料で分散相にナノメータサイズの粒子を含有している焼結体(ナノコンポジット材料)などを総称してナノフェーズ材料と言う。
固有抵抗αの導電体の電気抵抗(R)は、導電体の長さ(L)に比例し、断面積(S)に反比例する。R=α(L/S)。また、時間(t)に電流(I)のなす仕事(W)はW=I2 × R × tで表される。従って断面積の異なるグラファイト型に通電すると断面積の少ない部分は大きい部分より発熱する。セラミックス、金属の各々最適焼結温度の高温部、低温部を同時に発生させることができる。SPS法独特の焼結方法。特に傾斜機能材料を作製する場合に効果的である。
SPS法は原理的に「パルス電流は流れやすいところに集中的に流れる」特性があり、一般に試料圧粉体・焼結体中心部に流れるパルス電流値および表皮効果によって試料圧粉体・焼結対外周部に流れる電流値が他所に比べ大きくなる傾向がある。また、焼結中に伝達される加圧力は壁面抵抗により角形状と丸形状とで圧力分布、電流分布状態が大きく異なる。その結果SPSの最適焼結条件は小径(φ20~30mm)の場合と大径(φ50~200mm)とではそれぞれに異なる。これらを「SPSの寸法効果、形状効果」と言う。
原料粉末を所定の容積に充填した場合、粒子間および粒子内の空隙を含んだ状態の単位体積あたりの質量を言う。
理論密度に対する実測密度との比率を(%)で示したもの。理論密度は原料粉末が完全に緻密化した状態の時の密度を計算する。焼結状態の良否判定や気孔率の目安になる。
原料粉末の粒子同士が結合して粒子自体が大きくなりつつ緻密化、焼結が進行する。固相焼結においては粉末結晶粒子の成長そのものであり、液相焼結においては母相の固相粒子の成長を言う。
SPSでグラファイト型内に充填された原料粉末粒子は圧粉体状態で1次的に配列される。焼結進行に伴い緻密化・収縮段階で位置が2次的配置に移動して行く。これを粒子の再配列と言う。
塑性変形によって固体や粒子が変形していくこと。
同一の組成および結晶構造を持つ多結晶焼結体において結晶方位の異なる結晶粒子の境目を結晶粒界あるいは単に粒界と言う。
結晶を構成する原子がその固体の空格子点を介して移動することを言う。
焼結では小さな粒子の凝集など原料粉末粒子間(分子間)に働く引力のこと。
焼結工程の十分緻密化された焼結体が得られる最終工程の温度を焼結温度言う。SPSではグラファイト型の外壁温度を測温しこれをSPS焼結温度と言い、粉末内部の実際温度とは異なる。一般的には、SPS焼結温度は内部温度よりおよそ100~250℃程度低く測定される場合が多い。
通常、従来焼結法では焼結工程の所望物性を得る最高温度(焼結温度)での保持時間を言う。この最高温度までの時間を昇温時間、取り出し温度までを冷却時間あるいは降温時間と言い、SPSでは昇温速度が早く保持時間が短いため、昇温・保持時間を合せSPS焼結時間という場合がある。
多孔質体の総体積に対する開気孔と閉気孔を含むすべての気孔の体積率を%で示したもの。
開気孔は圧粉体または焼結体内の外部表面に通じている空隙空間(気孔)。閉気孔は外部表面につながっていない閉鎖状態の空隙空間(気孔)をいう。
固体物質において塑性変形ひずみが一定の応力のもと、時間とともにその塑性ひずみが増加する現象。
通常焼結時の材料準備段階で作製する圧粉体、粉末成形体のこと。粉末を圧縮固化した未焼結状態の成形体。